UC(潰瘍性大腸炎)について
UC(潰瘍性大腸炎)Q&A
【監修】横浜市立大学附属市民総合医療センター 炎症性腸疾患(IBD)センター 内科担当部長 国崎玲子 先生
潰瘍性大腸炎について
生活していく上で
学校生活で気を付けることって?
- 潰瘍性大腸炎は若い世代に発症するため、きちんと病気を治めて、希望の勉強をすること、希望の仕事ができることは、病気を治療する目標として極めて大事です。
- 症状が落ち着いている<寛解期>には、学校生活に大きな制限はありません。体育も給食も、皆さんと同じです。
- 腸に炎症がある<活動期>には、授業中や試験中に急にトイレに行きたくなったり、体育の授業を見学したりすることもあるでしょう。あらかじめ担任や保健の先生に病気について説明し、症状をしっかりと伝え、学校生活を送りやすいよう配慮してもらうことも大事です。
- <ステロイド剤の内服中>には、感染症に注意し、筋肉や骨に過度の負担がかかる運動は控えるなどの配慮をします。
- 病気が悪化し、重症や難治化して<長期入院>が必要な時期には、中学生以下のお子さんは、院内学級を利用するなどの工夫が考えらえます。高校生以上の場合は、主治医と学校の先生で相談してもらい、クラスメートに遅れないよう、別途課題を用意してもらうなどの工夫もできるでしょう。潰瘍性大腸炎のお子さんが、病気を克服して御自身の夢をかなえ前に進むためには、ご家族、学校の先生方と、主治医を含めた医療従事者など、周囲の大人が協力してサポートすることが必要になります。
部活や習い事は続けても大丈夫?
部活や習い事は無理のない範囲であれば続けて構いません。がんばり過ぎて睡眠や休息が不十分にならないように心がけてください。体調によっては部活や習い事をお休みすることも考えられるので、学校や習い事の先生の理解を得ることも大切です。
進学への影響はあるの?
潰瘍性大腸炎だというだけで、進学に特別に配慮する必要はありません。潰瘍性大腸炎は治療によって病気を安定させることが何より大事ですので、進学先を選ぶときには、定期的な通院が可能で、無理せず通学できると不安が少ないでしょう。家族や学校の先生、主治医と相談しながら、自分に合った進学先を選び、進学準備を進めましょう。
就職への影響はあるの?
最近は潰瘍性大腸炎の患者さんが増えたため、一般的に、潰瘍性大腸炎だというだけで就職を断られることは殆どないと思います。実際に患者さんが、潰瘍性大腸炎と付き合いながら普通に働いています。過度に心配する必要はありませんが、病状が不安定で仕事の負荷について不安がある場合は、就職先や主治医と相談しましょう。
また、潰瘍性大腸炎は定期的な通院と治療継続が必要な疾患ですので、就職しても病院を定期受診すること、病気が悪化した場合は病院を受診することがあることなども伝えた上で、きちんと理解が得られる職場を選ぶことが望ましいです。
避けたほうがいい仕事は何かあるの?
私の働いている医療現場も含めて、潰瘍性大腸炎の患者さんはさまざまな職業で活躍しています。潰瘍性大腸炎だというだけで、避けたほうが良い仕事はありません。ただし、過度の疲労や睡眠不足などのストレスが潰瘍性大腸炎を悪化させる一つの原因とする報告もありますので、病状が不安定などで不安のある場合は、極端に多忙な仕事は避けると安心でしょう。また、前述のように、就職しても定期受診できる職場の理解を得られることが、仕事を続けるうえで大切です。
外出時のトイレの対策って?
外出先のトイレの場所を事前に確認しておくと安心です。最近では、トイレの場所を検索できるウェブサイトなどがあるので活用してみましょう。
運動はしてもいいの?
体調が悪いときを除いて、運動を厳しく制限する必要はありません。運動はストレス発散にもなり、趣味として適度な運動を楽しんでいる患者さんは多くいらっしゃいます。疲労が残らない程度の運動を心がけましょう。
ステロイド剤の内服中は、骨折リスクが上がり筋肉も付きづらくなりますので、筋肉や骨に負担のかかる運動は控えますが、軽い運動を継続することが勧められます。
旅行するときに気を付けることって?
症状が落ち着いているときであれば、過度に心配することはありません。気心知れた仲間との旅行はストレス発散にもなります。常用薬を準備するほか、疲れがたまらないよう無理のない旅程にしましょう。海外旅行など旅行が長期にわたる場合は事前に主治医に相談し、薬などが不足しないように努めましょう。また、持参薬を証明する英文の『薬剤携行証明書』や、処方せんのコピー、お薬手帳等を用意しておくと安心です。
潰瘍性大腸炎はストレスで悪化するの?
どうして潰瘍性大腸炎になるのか、潰瘍性大腸炎が再燃するのか、原因は分かっていません。アトピー性皮膚炎や喘息と同様に、一般に免疫が関わる疾患では、ストレスが病気を悪化させる方向に作用すると考えられていますが、ストレスだけが悪化の原因ではありません。趣味の時間を持つなど、ストレスをためない生活を心がけると良いでしょう。気になることや心配事があるときは、身近な家族や主治医のほか、メンタルケアの専門機関に相談することも勧められます。
症状が落ち着いても治療は必要?
潰瘍性大腸炎の治療の基本は薬物療法です。治療を中断してしまうと再燃しやすくなることから、継続した治療が必要な疾患であると考えられます。潰瘍性大腸炎の治療の目的は、腸に炎症のない、<粘膜の寛解状態>を保つことです。潰瘍性大腸炎は腸のやけどのような病気ですから、粘膜に炎症を繰り返してしまうと治りづらくなってしまいます。
さらに多くの病気で、長期間、炎症を繰り返したり炎症が持続すると癌化が増えることが知られています。潰瘍性大腸炎は、若い患者さんに発症し罹病期間が長い病気ですので、症状が落ち着いていても、治療で腸の炎症を抑えて寛解状態を維持し、将来の癌化を予防することも、潰瘍性大腸炎の重要な治療目標の一つです。継続する治療の種類や量は患者さんによって異なりますので、主治医の指示に従い、治療を自己中断することがないようにしましょう。
潰瘍性大腸炎だと他の病気にもかかりやすくなるの?
潰瘍性大腸炎だというだけで、体が弱くなったり、他の病気にかかりやすくなることはありません。また、リウマチなどの膠原病にかかりやすいこともありません。
ステロイド剤をはじめとする、免疫を抑制する治療を受けている場合は、わずかですが感染症にかかるリスクが上がりますので、感染症予防に留意が必要です。
また、潰瘍性大腸炎の炎症が腸管に長期に持続すると、大腸癌のリスクが上がりますので、癌化を防ぐためにも適切な潰瘍性大腸炎の治療を継続することと、定期的な内視鏡検査が必要です。
潰瘍性大腸炎では、災害時への特別な準備が必要?
災害時にはかかりつけの医療機関や薬局に行けるとは限りません。お薬手帳や、服用している薬を記したメモを携帯しておくと、かかりつけ以外の医療機関であっても、必要な医薬品を正確に伝えることができます。また、災害用の携帯用トイレを準備しておくと安心でしょう。
どこで潰瘍性大腸炎の情報は得られるの?
まずは主治医などかかりつけの病院の医療関係者や、知りたい内容について相談してみましょう。
その他、「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班や、NPO法人 日本潰瘍性大腸炎協会(CCFJ)などが、ホームページで患者向けの情報を発信したり、情報誌の発行や、定期的な市民公開講座を開催したりしています。「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班のホームページでは、病気に関するパンフレットや、妊娠や手術など専門性の高い情報についての患者さん向け冊子も、直接ダウンロードできて便利です。
保健所が勉強会を実施する場合もあるので、調べてみるとよいでしょう。
他の潰瘍性大腸炎患者さんと情報交換できるの?
全国各地の患者会では、患者さん同士で情報交換する場を提供しています。他の患者さんとの交流は、病気に関する悩みや不安を共有する機会となります。患者会の情報はインターネットで調べられるほか、各都道府県にいる「難病コーディネーター」に、患者会について尋ねてみるのもよいでしょう。
潰瘍性大腸炎患者への金銭面以外での社会支援は何かあるの?
「ヘルプマーク」といわれ、潰瘍性大腸炎の患者さんだけでなく、外見から援助や配慮を必要としていることの分からない方が援助を得られやすくするためのマークがあり、全国で広まり始めています。潰瘍性大腸炎の患者さんもヘルプマークを活用することができます。詳しくはこちらをご覧ください。
生物学的製剤を使っていて軽症になった場合、自己負担はどうなるの?
- 多くの生物学的製剤は高額であるため、適切に手続きを行っていただければ、「軽症高額」に該当し、軽症になっても医療費助成の対象になります。
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さらに、指定難病の医療費助成制度には、「高額かつ長期」の制度があります。これは、「高額かつ長期」の認定申請を行う日の属する月以前の12ヵ月の間に、「月ごとの医療費総額が5万円を超える月が年間6回以上」あれば、医療費助成を受けられるものです(詳しくはこちらをご覧ください)。自分が該当するかどうか分からない場合、難病情報センターのホームページで確認してみて下さい。
http://www.nanbyou.or.jp/entry/5460難病情報センターホームページ(2019年2月現在)から引用
生活習慣について
食事ではどんなことに気をつければいいの?
今まで多くの研究が行われていますが、現時点では、明らかに潰瘍性大腸炎を発症させたり、悪化させることが立証された、特定の食事の報告はありません、そのため、潰瘍性大腸炎だというだけで、特に食事を制限する必要はありません。バランスのよい食生活を心がけ、年齢や生活習慣に応じて必要な栄養量を摂るようにしましょう。食事に関する潰瘍性大腸炎患者さん向けのウェブサイトも参考になります。
ただし、潰瘍性大腸炎を発症する原因がまだ分かっていないこと、恐らく患者さんによって病気の原因が異なると推測されることから、もし特定の食事をとることで病気が悪化すると感じている方は、その食品を避けるとよいでしょう。
頻回の下痢や血便など、症状が悪化したときには、刺激物を避け、消化のよい食事が勧められます。主治医や栄養士とよく相談しましょう。
お酒は飲んでも大丈夫?
症状が落ち着いている場合、飲酒は問題ないと言われています。ただし、アルコールはもともと下痢を増加させる作用があるので、症状が悪化している活動期には下痢や出血が増えるため、お酒は控えたほうがよいです。
タバコを吸っても大丈夫?
喫煙によって、潰瘍性大腸炎が悪化するという報告はありません。ただし、喫煙歴があることが、潰瘍性大腸炎の発症の危険因子であることが報告されています。健康に悪影響があることも考慮すると、喫煙は控えたほうがよいでしょう。
月経・妊娠・出産についての疑問
月経への影響はあるの?
潰瘍性大腸炎に限らず、女性患者さんで病気が悪化して体調が不良になると、月経が不順になったり止まったりすることがありますが、多くの場合は体調の回復により月経も回復します。また、ステロイド剤の内服中は、ホルモン剤であるため月経にも影響し、月経が不順になったり止まりますが、やはり薬剤の中止によって元に戻ります。
症状が落ち着いていたりステロイド剤をやめても、月経が回復しないなど気になる症状がある場合は、他の病気がある可能性を含めて、婦人科に相談することが勧められます。
患者さんが男性の場合、パートナーの妊娠に影響はあるの?
男性の患者さんが潰瘍性大腸炎だというだけで、パートナーの妊娠に影響することはありません。また、男性患者さんが、パートナーの妊娠の数か月前までに投与を受けた薬剤で、妊娠に悪影響を与える薬はないと考えられています。
男性患者さんが一部の5-ASA製剤を内服している場合、内服中は精子の数が一時的に減少しますので、パートナーは妊娠しづらくなりますが、中止すれば2~3か月で元に回復し、永久不妊になることはありません。
投与を受けている薬によっては、ごくわずかですが影響が報告されている薬剤もありますので、パートナーの妊娠を考えている男性患者さんも、事前に主治医に伝えて相談しましょう。