CD(クローン病)について
CD(クローン病)は
どんな病気なの?
【監修】北里大学医学部 消化器内科学 横山薫 先生
クローン病は消化管全体に炎症が起こりうる病気で、原因がはっきりしていません
クローン病は消化管粘膜(ねんまく)※1に原因不明の炎症(えんしょう)※2や潰瘍(かいよう)※3が生じる疾患で、口から食道、胃、十二指腸にいたる可能性があります。潰瘍性大腸炎の病変はほとんどの場合、大腸(の粘膜)に限られますが、クローン病の場合、発生しやすい場所は小腸や大腸ではあるものの、ときには、口、食道、胃、十二指腸にも点々と炎症が起こる可能性があります。
この「クローン」という病名は、この病気を最初に報告したアメリカの医師の名前にちなんで名づけられました。

※1 腸や胃・食道の内側を覆っている組織でからだの内外を隔てている膜
※2 からだの一部が熱を持ったり赤くはれたり痛んだりすること
※3 粘膜や皮膚の表面が炎症を起こしてくずれできた傷が、深くえぐれたようになった状態
クローン病は腸壁の深くまで進むことがあります
潰瘍性大腸炎と比べ、クローン病の炎症は粘膜だけでなく、腸壁(ちょうへき)の奥深くまで炎症がおよびやすく、腸管の合併症を起こしやすい傾向があります。また、手術が必要となることも比較的少なくありません。
クローン病の患者数は年々増加しています
日本における患者数は4万人を超え、発症時年齢は10~20代が最も多く、若年者に起こりやすいのが特徴です(図1、図2)1)。男性は20~24歳、女性では15~19歳の発症が多く、男女比は2:1で男性が多い疾患です。
特定医療費受給者証所持者数

クローン病の推定発症年齢

1) クローン病(http://www.nanbyou.or.jp/entry/81)
クローン病発症の原因についてさまざまな要素のかかわりが考えられています
クローン病が発症する正確な原因はまだわかっていません。近年の研究により、遺伝的素因、食事や喫煙などの環境因子などさまざまな要素が背景としてかかわり、その結果、免疫異常が引き起こされクローン病が発症するのではないかと考えられています。また、免疫機能の主役である白血球(顆粒球、単球、リンパ球)が異常に働き、慢性的な炎症が引き起こされていると考えられます。
新井万里, 金井隆典: IBDを日常診療で診る(日比紀文, 久松理一 編), 24-31, 羊土社, 2017.(改変)
「何がクローン病を引き起こすのか
~クローン病の発症因子~」
クローン病に関係する遺伝的素因として、欧米ではNod2(IBD1)という遺伝子の機能欠損多型やHLA※4の多型に強い影響を受けていると報告がありますが、日本人ではNod2との関連は、はっきりしていません。日本人でのクローン病の感受性遺伝子※5については現在解析中です。
※4 白血球の型
※5 ある特定の病気において発病のしやすさに関係する遺伝子